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プロローグ
スタートラインに立った瞬間が好きだ。
頭上でどこまでも続く青い空、そして一番に飛び出せば誰もいないだだっ広いこの場所で、思いっきり走れるのかと思うとゾクゾクしてたまらない。
パン!
スタートの合図と共に、俺は誰よりも速くつま先を蹴って走り出した。
俺の両側を風がどんどん通り抜けていく。
ヤバい。
すげー気持ちいい。
あっという間にフィニッシュラインが見えてくる。
まだまだ走れそうだ。
最後でぐんと加速する。
ああ、今日もいつも通り絶好調だ。
タイムなんか見なくたって分かる。
フィニッシュラインの向こうで待っているアイツの漆黒の瞳が、全部教えてくれる。
「サンキュ、静」
俺は静からタオルを受け取って、無造作に汗ばんだ頭をガシガシと拭いた。
「相変わらず調子いいね、うちのエース」
静は大きな瞳を細めて、きゅっと笑った。
「当ったり前だろ。
次の大会で推薦決まるんだぜ。
静だって一緒だろうが。
上着着たままで、練習する気ないのかよ」
ジャージの胸元からのぞく首筋や手首は男とは思えないほど白く、華奢だ。
外で一緒に走ってるのに、浅黒い俺とは全く違う。
「だって、もうすぐ進路相談でしょ」
「ヤッベ!
忘れてた!」
静は肩をすくめてため息をついた。
「だと思った。
相談終わる頃には部活も終わってるから、 着替えておかないと。
はい、部室の鍵 」
「さっすが静!」
俺たちは急いで部室で着替えを済ませると、速足で進路相談室に向かった。
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