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第3章 仕事
「まず・・・だがね」
老婆はオンダの言葉を遮る。
言葉だけで制してはいるが、あたかも体全体で止めているかのような迫力だった。
「3つに絞るのは正しい・・・だがね、プロなら1つに絞りな」
タチバナもオンダもその言葉に気絶させられた時の鈍痛を思い出した。
自分の未熟さを知らしめる、教官の声だ。
「・・・まぁ、状況を整理するなら3つは必要か・・・、良いだろう代金はもらっている」
露骨なまでのフォローだった。
3つでも譲歩してやっている。
その3つは考えに考えを尽くせ、と老婆は言ったのだ。
オンダもタチバナもここに来る段階でそれなりの勉強も訓練も積んでいる。
何故、そんな風に言われなくてはいけないのだ、という怒りを抑えながらオンダは自分の考えを再び整理した。
「考えを整理していることを悟らせるんじゃない、3つまでは必死に考えたんだろうが」
(まるでお父様に怒られている気分ね)
はぁ、と翻弄されている自分たちを省みながらタチバナが口を開いた。
「<絨毯売り>あなたに聞きたいことは以上の3つよ」
振り回す言い方には付き合ってはいけない。
お金を払っている以上、いくつ質問しても構わない。
1つだろうが、3つだろうが、100だろうが構わない。
オンダは話をしやすいように3つを提案して、老婆はその主義として1つと言っただけなのだ。
本質は1つ、オンダとタチバナがこの国を滅ぼすのに必要な情報を手に入れるだけなのだから。
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