第3章 仕事

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老婆はそのタチバナの言葉に、はは、とだけ返した。 「そこらのチンピラと一緒にするんじゃない、<絨毯売り>を舐めるな」 「<絨毯売り>この都市を滅ぼすに足る情報が欲しい、ルカスクの財政、エスメラ=ロールブラムについての情報、そして首都ルスカとの今の関係だ」 老婆の声にタチバナは応じずに言い放った。 オンダ自身、己の不甲斐なさを感じながらも<絨毯売り>の言葉に妥当性を感じていた。 この情報は謂わば一般的な教科書通りのもの。 老婆が言いたいことはつまり 「甘い、それを知ってどうする?」 「どうするかは知ってから考える、少なくともあなたが気にすることではないはずよ」 タチバナの言い分が正しい。 オンダも分かっている。 老婆の言葉は完全にビジネスのそれを超えている。 「・・・<絨毯売り>・・・お前には僕たちの求める情報よりももっと交換のある情報を持っているんだな?」 タチバナはただ表情を変えることなくそのオンダの声を聞いた。 相手の心情を汲み取ろうとしすぎるのがあなたの悪い癖だと。
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