第3章 仕事

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「何故・・・何のためにエスメラ=ロールブラムはこんな街をこんな形で存在させているんだ?」 西方文化圏に属するトガル帝国が東方文化圏を残すことは考えるほど危険なことだ。 一つの国に幾つもの思想が存在できることの危うさ。 人間の多様性を担保できるもの。 「その質問でいいんだね? あいにくこの魔法のランプは使い捨てさ」 タチバナもオンダの気づきに驚いていた。 自分たちの迂闊さに。 小さな国土を一つの思想で持って統一している<死神>の国では考え難い問題点だった。 「違う・・・この街の・・・いやこの<国>の強みは何だ?」 オンダは敢えてルカスクを<国>と呼んだ。 トガル帝国から独立して国家となることすら出来る財力と文化。 しかし、兵力はどれほどだろう? ルカスクの成立は14年前。 その期間で帝都を相手できるほどの力は手に入らない。 ならば・・必ず強みか、帝都の弱みかどちらかを持っている。 この<絨毯売り>はそれを持っているのだ。 「よく、そこに気づいたね・・・」 そこで<絨毯売り>は扉に目を向けた。 「ヘクター! 入りな」 ゆっくりと扉が開き、そこに青い目の男が入ってきた。 その男はにっこりと微笑んで 「初めましてボンクラども」 そんな毒を吐いた。
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