4章 ヘクター=アクシディアス

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4章 ヘクター=アクシディアス

相手を怒らせるやり方は<絨毯売り>にそっくりだな、というのがオンダの印象だった。 二重で長めのまつげから覗く碧眼と見下ろすほどの高身長、あとは堂々とした所作だけで彼は威圧感を与える。 「ヘクター=アクシディアスだ、よろしくな」 「お前らの仕事の補佐をしてくれる、オンダはこれからヘクターに従いな」 そこまでするのは越権行為でしかない。 ただの情報屋がここまでするのは明らかにおかしい。 「エスメラの武器は分からないが、推測は出来る」 そのおかしさも、おかしさを生み出す原因も知っているのであろうヘクターは話を先に進めた。 「聖誅軍が西方文化圏に入った時、一番人を殺したのは何だと思う?」 「ある意味では情報」 タチバナが間髪入れずに答えている。 このおかしさはあくまで脳内で処理すべきことだとみなしてからは早い。 「これがもたらした死者数は桁が違う、人間が古来より克服できていないものであるからな」 違うとも言わずにヘクターは否定した。 タチバナが言わんとしたのは情報というより、情報の不足のことである。 しかし、情報が足りていなかったのは恐らく西方にもなかった。 ということは決定的なものではなかったのだ。 そして次に考えるべきは、どちらがより死んだのか、だ。
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