二人

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バザールの入り口には大量の生鮮食品街が並び、僕たちが見たこともないような肉が焼かれたりしている(時として焼かれていて欲しくないものが焼かれたりしている)。 僕たちは特に目的を持ってこのバザールに入ったわけじゃない。 職業柄というほど大層なものではないけれど、その土地の市場を見ることはその土地を知ることになる。 その土地を知り、その土地に馴染むこと。 それが僕たちの第一任務である。 幸い、東洋系で地黒な僕たちは容姿の面でこのバザールの中で目立つことはなかった。 「そうだね、しかも楽しそうだ」 ふと目に付いた目の前の精肉店。 店の主人が外しているのか、10歳くらいの少年が口々に注文する客を手際よく片付けていく。 かつて、十人くらいの人間の陳情を聞き届けたというどこかの国の役人よりもすごいのではないかと僕は思ってしまった。 「その国を知るなら子供を見ればいい・・・か」 僕はふと僕たちの師匠とも呼べる人の言葉を思い返した。 子供を守れる国であるのか、守れる国ならどの程度なのか。そして、その中で子供は笑えているのか。 ようは、ふとしたことからその国の政治状況は分かるぞ、と言いたかったその言葉は僕の・・・いや僕たちの中で真実だった。 「うん、子供が笑って商売できるならいい国よ、身なりからしてしっかりしている」     
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