二人

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今日が祝日であること、その子供が綺麗に洗濯された服を着ていること。 受け答えがしっかりしていること。 教育が拡充している証だ。 そうでなければ、こんな店の子供がこのようなことを出来ているわけがない。 「バザールの入り口でもう重大なことが分かったな」 「わかりやすい国はいい国よ」 これはタチバナの持論だった。 分かりやすい国とはその在り方がしっかりしている国。 そこに哲学が感じ取れ、そして国民にも浸透している。 それがタチバナのいう分かりやすい国なのだ。 「・・・戻るか?」 分かりやすい国はいい国よ、タチバナがそのように言う時はいつも少し体が震える。 僕でいるなら喉仏が震えてしまうような、何かに堪えきれなくなるような弱さを見せる。 「・・・いいえ、奥まで見ましょう」 「うん・・・そうだな」 タチバナが強い人だと僕は知っている。 いや、強くあろうとしている人だと知っている。 彼女は強く在れるか?と聞かれたら、強く在る、と答える。 僕はいつも卑怯な質問をする。 僕の代わりに彼女に強く在るように仕向ける。 僕はいつも彼女を引っ張るように見せながら彼女の背中に隠れる。 彼女も分かっているのだろう。 僕がそんな卑怯者であることを。     
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