二人

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  *任務 人々の生活はバザールの入り口でほとんど完結する。 食品が並び、フォワという米粉で作られた麺と鶏ガラで煮出しされたスープが合わさった料理を出す店がそこらじゅうにある。 この料理がこの国におけるソウルフードであり、下手をすれば家庭でご飯を食べるよりもこのバザール内でこの料理を食べることの方が多いらしい。 そういうわけで即席の食器を片手に多くの地元民が地べたに座ってカッチャと呼ばれる緑茶で喉を潤しながら談笑している。 これは僕やタチバナには理解できない習慣だったが(僕たちは普通に家庭で椅子に座ってご飯を食べた、地べたに座るというのは理解はできても実行はあまりできない)地元民になろうとするならいつかはこれに馴染まなければいけない。 「楽しそうね」 タチバナは理解できないものを楽しそうと言う。 彼女から見れば理解できないものはそのまま新しいものであり、それを知ることが出来たことは幸運だと言う。 「うん、実は子供の頃から地べたに座ってご飯が食べられたらどんなに嬉しいか想像したことがある」 僕は素直に答えた。     
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