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彼女は他人がどんなことを考え、楽しもうとするかを知りたいと思っている。
「あら、おじ様もおば様もお嘆きなされるわ」
「中途半端にお嬢様ぶるなよ」
別に家庭同士の付き合いがあったわけではない。
ただ、幼年士官学校時代から変に馬が合い、士官学校に進んでからは仲間を交えてそれぞれの故郷巡りもした。
その時に会っただけの話。
「失礼、ふふ」
タチバナはたまに僕をからかって遊ぶ。
僕の家は・・・まぁそれなりに地位を持っている(そのことが僕の故郷を離れてこんなところにいることにも関わっている)。
正直、士官学校に通うなら見過ごせないレベルの地位だ。
それをからかうことが出来るのは彼女が天然だからというわけではない。
そんな楽しそうな風景を横目に僕たちはバザールを進む。
食品街を抜けると雑貨が並ぶ通りに出る。
このあたりから日光を遮るための即席の庇がバザールを覆うようになり、薄暗くなってくる。
色とりどりの生地が並ぶが、そこは僕には興味を引くものはないし、タチバナはその審美眼によって質ではなくコーディネイトを楽しむ場となった。
「チカチカするね」
なぜか、妙に紫やオレンジの意味合いが強い布が多い。
そういえばトガル帝国は太陽信仰だったか。
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