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二人
まるで、ここだけは世間から隔絶されているみたいね。
彼女は悲しそうに言った。
聡明な彼女のことだから、隔絶された世間なんてありえない。
ここに住んでいる人々にとって僕達が関わる問題が無関係に思えるだけで、僕たちがまで無関係になれるわけがない。
結局、状況の把握やら何とかっての絶対的なものに見えて、その時の周りの状況にもよるのかも知れないな。
彼女の言葉を否定も肯定も出来なかった僕はふとそんなことを考えて、訪れた街を眺めていた。
大貴族エスメラの領地、ルカスク。
トガル帝国の最南端に位置し、帝都ルスカとは巨大なバスティア山脈を隔てており、その南には広大なルカスク海が広がっている。
トガル帝国の特徴は広大な領土だけでなく、山脈や大河によってその国土が物理的に断絶されるところにある。
ここルカスクはその帝国領土の特徴を顕著に示しており、バスティア山脈の向こう側では度重なる紛争が世界戦争という巨大な猛火に変貌しようとしていることすら共有されていない(当然、貴族エスメラは把握している、民衆レベルでという話である)。
この街の最大の強みはその孤立しているところにある。
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