泡沫の恋

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 ガタガタと揺れる朝のラッシュ時間の満員電車。ところ狭しと溢れ返る通勤中、通学中の人、人、人。 (毎日乗ってても、この人混みには慣れないなあ)  片手に吊り革、もう片手で鞄を胸元で抱きしめるように持ちながら、越谷宏高(えつやひろたか)はぼんやりとそんなことを思う。  窓際に立つ男子高校生が耳に入れているイヤホンから音が漏れている。こんなにも人が密集して、あちこちから小さな物音がする中でも分かるほどの音。越谷はどれだけの音量で聴いてるんだと言いたげな眼差しをそちらに向ける。  次に気になったのは、その高校生ではなく、その隣。  おそらく越谷よりいくらか下であろうという年齢の若い女性が、俯いて立っている。下を向いてスマホでもいじっているのかと越谷が視線を下に向けると、はっと息を飲む。
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