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その女性のスカートを撫でまわす男の手。越谷は瞬時に痴漢だと理解した。女性は恥ずかしさと恐怖を周りに気取られないようにするためか、長い髪で顔を隠している。俯いていたのもこのためだろう。
「おい、何だよこの手は」
「なっ、何だお前は!」
「質問してるのはこっちだ。何だこの手は。見てたんだぞ、痴漢野郎」
「違う! 俺は痴漢なんてしてないっ」
“痴漢”というワードに周囲はざわつき、電車が次の駅に停車したタイミングで駅員に突き出してやろうと越谷が男に手を伸ばすも、それよりも開いた扉から男が逃げ出すのが早かった。
「あっ、くそ! 逃げやがった!」
男が逃げた方向を見ているうちに扉が閉まり、電車は再び動き出す。周囲も最初は好奇心から自然と二人を見ていたが、次第にその視線もばらけていった。
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