泡沫の恋

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「あなたが秋良さん? 宏高からいつも話聞いてて今日会えるの楽しみにしてたのよー。さ、上がって上がって」 「ちょ、母さん!」  両親にいつも恋人の話をしているなどと知られたくないことを本人に暴露され、真っ赤になりながら声を荒げる越谷に、隣でそのやり取りを見ていた秋良が手を口元に当てながら控えめに笑う。それに気付いた越谷が恥ずかしそうに、そして気まずそうに秋良をじとりと見つめる。 「……今の、忘れて。ほんと忘れて」  目を逸らしながらも耳まで赤くしてそう言う越谷が秋良の目にはとてもかわいく映り、愛おしそうに目を細めながら越谷を見つめていたことを、越谷は知らない。  今日は初めて秋良が越谷の家に挨拶に来たのだが、越谷の両親も先程の会話から分かるように日頃から秋良の話をよく聞かされていたので快く二人の交際を受け入れてくれた。  会話も弾み、特に母親とは越谷との思い出話に花を咲かせてすっかり仲良くなっており、越谷としては恥ずかしいやら嬉しいやら複雑な心境だった。
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