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「あなたも、思っていたより美人じゃないですか」
「ありがとう」声に少し照れが混じっていた。
しかし。
真実は時に残酷だ。そして、時の流れも……
それでも、ぼくの言葉に嘘はなかった。素顔の彼女は、確かに美人だった。
少なくとも、五十年前は。
今でもその名残はあるし、SADによる年齢遡行シミュレーションの結果を見てもそう言える。
彼女が今や忘れ去られた「カメラ」などというものを持っているのを見た時から、そんな気がしていた。やはり彼女は……
ぼくと同年代だった。
カメラを彼女に返そうとしたとき、手と手が少し触れた。その瞬間、彼女の個人情報のかけらが直接脳内に飛び込んできた。
夫と三年前に死別、か……
それを言うなら、ぼくだって二年前に妻を亡くしている。これもまた、何かの縁ってヤツかもしれない。
「寒くないですか? 体に障りますよ。ぼくの家で、お茶でも飲んでいきませんか?」
「いいですね。それじゃ、お言葉に甘えて」
ぼくの「視界」の中でアニメ顔のかわいい女の子が、嬉しそうに笑っていた。
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