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華子が猫に触れようと手を伸ばす。
『痛…』
猫は嫌がって華子の手を引っ掻いた。
『華子さん、手をこちらに』
望月様は華子の手をとり、自分の手巾を巻き付けていく。
『いけません、望月様の手巾が汚れてしまいます』
引っ掻き傷からは血が滲んでいたから、真っ白な手巾汚れてしまう。
『そのようなことはどうでもよいのです。それよりも華子さんの白い手に痕が残ってしまう方が問題です』
望月様は華子の手に手巾を巻き終え、痛みがないよう両手で優しく華子の手を包み込んだ。
『もし、万が一、痕が残ってしまうようなことがあっても、自分が嫁に貰いますけどね』
望月様は笑う。そして握っていた手の甲に口づけをした。
『早く良くなりますように』
手巾越しの口づけに華子は頬を真っ赤に染める。
『も、望月様…』
『赤くなられて…可愛らしい』
華子の手を握っていた望月様手はいつの間にか華子の頬に添えられていた。
今は縁側に二人きり。周囲には誰の視線もなかった。
二人の距離はゆっくりと近づいていく。華子はぎゅっと目を閉じた。
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