日記

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10月15日 今日はふたりで紅葉を見に行きました。 赤く色づいた葉はとても綺麗で、記念に一枚持ち帰ろうとしたら呆れられてしまいました。 木々の間を散策する時間はとてものどかで、ゆったりとした一日でした。  僕は手に持っていた本を閉じた。  周囲を見渡すと、赤く色づいた紅葉の木が秋風に揺られている。  振り向くと、ちょうど彼女が車から降りてきたところだった。 「やっと外出許可降りたんだから、無理するなよ」  僕は彼女に向かって釘をさす。 「いくら日記を再現してくれても、写真じゃ物足りないもん」  そう言って彼女は、軽い足取りで木々の隙間を縫って歩く。 「わ!綺麗な葉っぱ!」  彼女が足元に落ちていた紅葉の葉を一枚摘まみ取ってこちらに見せてくる。  僕は呆れ半分でそんな彼女を見ている。  でも、これで良い。  彼女の体力の心配は僕がしたら良い。  今は彼女が目一杯楽しんでくれたらそれで良いんだ。  今まで毎日日記を再現して撮った写真を彼女に見せていた。  すると彼女は決まって花が咲いたような笑顔になるのだが、その場に居られない自分をもどかしく思っているのもありありと伝わってきた。  でも、ようやく病状も快復に向かい、こうして外出も許されるようになった。  少しずつだけど、僕たちはかつての日常を取り戻し始めている。 「また来年も来ようね!」  明るい声で彼女が言う。  全く、こっちがそれをどれだけ望んでいると思ってるんだ。  どれだけ望んで毎日写真を撮っていたと思ってるんだ。  でもそんなことは、僕が分かっていれば良い。  ただこうして君と一緒に居られれば、それで良い。 「ああ、約束だ」  そう言って僕はどんどん先へと進んでいく彼女の背中を追った。
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