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「先生に言われたくらいで性別変わっちゃうんだ」
「だって、仕方ないよ」
「何それ。変、変、変!!」
「英理ちゃん、落ち着いて」
「たかちゃん、女の子なのに……」
たかちゃんからしたらわけが分からないに決まっていた。私はずっと彼女が彼女だということを否定してきた張本人に他ならないのだから。けれど、私は私以外の人に彼女が彼女だということが否定されてしまったことにひどく腹を立てていた。私に否定されても、自身の体に否定されても、それに抗うように伸ばしていた髪。私はそれが大っ嫌いだったけれど、本当は嬉しかったのかもしれない。
「英理ちゃん」
たかちゃんが私のほうに近寄ってきて、目を合わせた。
「ありがとう、英理ちゃん」
さああ、と風が吹いた。たかちゃんからはふんわりとあのシャンプーの匂いがしてきて、少し安心する。けれど、やっぱりこの匂いはきらいだな、と思った。
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