認めてあげない

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中学生になってたかちゃんは背が伸び、肩幅がちょっとがしっとしてきて、体つきが男っぽくなってきた。けれど、彼女はその見た目にそぐわない艶やかな髪を肩まで伸ばしていた。まるで、女の子の証だとでもいうように。 立派な校則違反だったけれど、普段の素行がいいからかたかちゃんがそれを咎められることはなかった。私はこの髪が大嫌いだった。細くて、まっすぐで、つやつやしていて、そこらへんの女の子の髪よりもずっとずっと綺麗な髪。たかちゃんの側にいるとびっくりするくらいいい匂いがふわりと香る。匂いの発生源である、甘いシャンプーの匂いが忌々しくて仕方なかった。その匂いを嗅ぐたびに、たかちゃんは女の子なんだって主張されているような気分になる。もう私に希望はないのだと、絶望を押し付けられているみたいな。 そんなの絶対認めたくなかった。私を好きになってほしかった。だから、カミングアウトされた小6の3月から、今に至る中2の11月まで、私は毎日毎日飽きもせずたかちゃんに告白し、時にはひどい言葉を浴びせ続けている。 けれど返事はいつだって「女の子同士なんだからだめだ」というものなのだ。そのくせ私がひどいことを言っても言い返してこない。腹が立って仕方がない。たかちゃんがそんなんだから、きっと私も諦められないのだ。
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