8人が本棚に入れています
本棚に追加
「その、ごめんね母さん。あんな事があったから、ずっと連絡もしないで……ずっと逃げてたの、私」
由宇の自殺をきっかけに、真奈は実家との縁を切った。自らの罪を目の当たりにすることから、十五年間逃げ続けてきた。真奈は、罪と向き合うことを恐れ、逃げて来た。
しかし、そんな真奈を母は攻めもせず、ゆっくりと抱きしめた。
「もう、いいの……あの頃のあなたはまだ子供だった。その子供の過ちを、正そうともせず私たち親も勘当と言う手段で同じように逃げた。あの頃、私たちがあなたたちを許し、更生させるために逃げずに正面から向き合うのが私たち親の責任だったのに……」
勘当され、真奈は両親から捨てられたのだと思い続けてきた。
今でも憎まれ続けているのだと思った。けれど、母の気持ちは違った。
あの頃、世間体を気にして真奈と加奈を勘当したことを『逃げ』だと言った。事件、実の娘たちと向き合うことを恐れて、娘たちを勘当したあの日から母はずっと苦しんでいたのだ。
「ごめんね……ごめんね、母さん」
「もう、辛いことは目を瞑って、忘れてしまいなさい。もう、あなた十分に苦しんで罪を受け入れた」
母を苦しめていたのも全てあの頃の過ちのせい。その罪の重さに、真奈は再び心を痛める。
最初のコメントを投稿しよう!