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それから俺は島の小学校で教師として働いた。学校が終われば、すぐに診療所に行く日が半年続いた。
ある日、医師が彼女を今日どこかに連れて行っても良いとの許可が下りた。いつもより元気そうに見える。俺は車イスを押して、彼女が行きたいと行った岩場へ行った。俺が溺れたあの岩場だ。車イスから彼女を抱きかかえて岩場へ下りた。彼女の青ざめた額と唇に口づけしながらさ…そうだろう?俺は…俺さまは痩せた女の体など軽いものだからな。コートを脱ぐと岩に敷いて彼女を座らせた。彼女は笑って俺の顔を見て言った。
「ほら真っ赤な太陽が海に沈むわ、きれいだわ」そうだな、あの時と同じ夕陽が沈む空を見上げている君は今でも本当にきれいだよ。遅すぎた俺さまの心臓は今も彼女に恋をしてカチカチと鳴っていた。
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