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誰かが俺の手を引っ張った。そして首に手をかけ海面へと上がって行くようだった。もうろうとする意識の中で、海面に漂う太陽のきらめきが見えた。
気がつくと、俺は岩場近くの砂浜に仰向けで寝ていた。ごほっごほっと咳と共に飲んだ海水が鼻と口から出た。「良かった!気がついた?」と言う声がして目を開けると、俺の顔を見ている女の子がいた。
俺さまともあろうものが、死ぬか生きるかの恐ろしい経験をしたのであった。
しばらくして起き上がると「助けてくれたのは、君か?」と尋ねた。
少女は何も言わずうなづいた。
それを見て俺の心臓が勝手に彼女に恋をした。確かに彼女がいなかったら今頃この俺さまはもう死んでいたのだから、心臓が恋をしてもおかしくはない。
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