第1章 出会い

5/11
前へ
/16ページ
次へ
その日私は仕事で八条大宮を歩いていた。 相変わらず、通りは弘法さんに行く人で溢れかえっていた。 いや仕事といっても、 カフェ巡りを日課にしていたので 今日もモノ書きするためのカフェを探していたと言う方が正しい。 京都は学生の街でもあり、 カフェの街でもある。 有名店から、隠れ名店までその数は帯びただしい。 一番のお気に入りは、 近鉄東寺駅近くにあるケンタッキー…というのは違って、 三条にある六曜社というコーヒー屋だった。 本当はそちらの方に行こうと思ったのだけれど、 ちょうど京都駅の方面に用事があったのを思い出して、 たまたまそちらの方を歩いていた。 東寺東門あたりに差し掛かると老若男女(ろうにゃくなんにょ) 笑顔で小走りに門の中に入ろうとする姿が見える。 11月も下旬に差し掛かり、底冷えをする京都の街を歩くと 手がかじかんでくる。 両手を擦り合わせながらも境内に並ぶ様々な露店に目移りしそうになる。 骨董品、着物のハギレ・・京野菜、 そしてたこ焼きや甘いお菓子の出店なんかも幾つか並んでいて 賑わっていた。 いつもなら素通りするのだけれど、今日は少しだけ覗いて見ようかと言う気持ちになって そぞろ歩く人の後ろに並び入り口近くまでやってきた。 いらっしゃい!いらっしゃい! 露店から賑やかな声が聞こえる。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加