第1章 出会い

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所狭しとひしめき合う露店の店主が、 客引きをする賑わいの中 ピンっと糸を貼るように意識が集中され、 ふっとタイムスリップするような感覚に見舞われることがあった。 今はなき古都の時代、 今のようにコンクリートの道路整備も、 お店もしっかりはしておらず 砂利道に古びた着物をきた人たちが練り歩く京の街がそこにはあったはずだ。 かの有名な芥川龍之介の「羅生門(らじょうもん)」も 確かこの東寺の羅生門が舞台だったはずだ。 朱雀大路にある羅生門は、 平安京のいわば正門だった場所なのだから。 当時の流行り病や疫病は、確かに不衛生や医学の遅れから持たされたものかもしれなかった しかし別の説によると、 夜な夜な鬼が出て人を食らう、と人びとから恐れられた場所が京都にはあったというのだ。 もしそれが本当なら、 安倍晴明の仕事は間違いなくこの百鬼たちを払う仕事だったに違いない。 今も残る南区唐崎にある児童公園には 「羅城門遺址」が残っている。 これは紛れもなく羅生門の跡地だ。 きっとはるか昔、この門を通して安倍晴明は百鬼が訪れないように護符を貼り、そして時には闘っていたのかも…しれない。 そう思うと無性にワクワクし、心は踊った。
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