事実を編集する女

2/11
前へ
/11ページ
次へ
 「これが、例の本......?」  週間誌リライト編集者・出作(いずさ)編美(あみ)の日常は、一冊の本に大きく狂わされた。 『筆者がなぞの怪死を遂げる、曰く付きの小説について知っている』 編美(あみ)の編集室に匿名で連絡があった。異常者の犯行と睨む警察、真相を追う数多の雑誌編集社が血眼で犯人を探す中、匿名での連絡は編美(あみ)にとって渡しに舟だった。 怪死事件の犠牲者は、文栄(ふみえい)正志(ただし)編美(あみ)がかつて小説の校正を担当した作家だ。  「良い? 小説はページ数や文字数が限られてるの。文字やページの無駄遣いが命取りになるのよ。もう少し簡潔で短い文章で書いてくれる?」  「作家はみんな、自分の時間を削って文字をつづっているの。しんどいのはわかるけど、それはあなただけではないのよ!」 小説がよくなるならと指摘してきた。それが文栄(ふみえい)を傷付けて自殺に追い込んだかと思ったが、杞憂(きゆう)だった。 だとすると、誰が何のために文栄(ふみえい)を殺害したのか知りたくなり、事件の情報が集まりやすい警察に接近するため、大手出版社エディットを退社。リライトに入社した。 そこで知り得た、有力な情報がこの曰く付きの本と言う訳だ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加