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「これが、例の本......?」
週間誌リライト編集者・出作編美の日常は、一冊の本に大きく狂わされた。
『筆者がなぞの怪死を遂げる、曰く付きの小説について知っている』
編美の編集室に匿名で連絡があった。異常者の犯行と睨む警察、真相を追う数多の雑誌編集社が血眼で犯人を探す中、匿名での連絡は編美にとって渡しに舟だった。
怪死事件の犠牲者は、文栄正志。編美がかつて小説の校正を担当した作家だ。
「良い? 小説はページ数や文字数が限られてるの。文字やページの無駄遣いが命取りになるのよ。もう少し簡潔で短い文章で書いてくれる?」
「作家はみんな、自分の時間を削って文字をつづっているの。しんどいのはわかるけど、それはあなただけではないのよ!」
小説がよくなるならと指摘してきた。それが文栄を傷付けて自殺に追い込んだかと思ったが、杞憂だった。
だとすると、誰が何のために文栄を殺害したのか知りたくなり、事件の情報が集まりやすい警察に接近するため、大手出版社エディットを退社。リライトに入社した。
そこで知り得た、有力な情報がこの曰く付きの本と言う訳だ。
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