確かに愛されていた これから俺も大事にする

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「こんにちは」  さり気なく、彼女の近くに行き声を掛けた。 「こんにちは、最近よくこの店に来てるね」  ピタリと彼女の動きが止まった。そのまま微動だにしない。  どうした? 俺変なこと言ったか? 普通の挨拶だったよな。  焦る。何か言葉掛けを続けなくては。 「ご、ごめんね、急に話しかけて。いや、その、君みたいな若い子この店に珍しいからつい気になって。な、何か探している本でもあるのかな?」  店員かよと自分で自分にツッコミを入れたいが、それよりもまず固まってしまった彼女をどうにかしなければ。  時が止まったところから少女はゆっくりと動き出した。  ギギギと効果音でも付けたくなるようなぎこちなさで俺に顔を向ける。 「えーと……」  その顔は笑っても怒ってもいないニュートラルなもので、だからいっそう対応に困った。  彼女はゆっくりと笑顔になった。まるで花が咲く様子をスローモーションで見ているように、だんだんと満開になる笑顔。  そして一歩、こちらに踏み出したと思った時には既に、俺の胸に飛び込んで来ていた。 「え、えっ?、ちょっと君……」  飛び込んきた彼女を受け止めようと反射的に回した手に触れたのは、女の子の体ではなかった。    俺の手に落ちてきたのは一冊の本だった。
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