つむじの花

1/5
前へ
/5ページ
次へ

つむじの花

 朝は眠い。カーテンのすき間から漏れる光と格闘しながら毛布にくるまる姿はアルマジロそっくりだと思う。この前、家にある動物図鑑で見たばかりだが、これだけの防御力を持っていれば誰かが起こしに来たところで返り討ちにしてくれようぞ。  どうでもいいけど、目の前にある家から黒髪ストレートでロングヘアの女の人が毎朝出て来る。たぶんどこかの会社の制服であると思われるグレー基調のスーツ姿で、丸襟のブラウス、首元には赤いリボンがついていた。    顔はよく見えないけど、なかなかいかしたつむじをしている。つるんとしたきれいな頭の形にぐるんと一回転に渦巻くつむじにエロチシズムを感じずにはいられない。オレは眠い目をこすっているせいか目の前がぼんやりして、ぶら下がっている藤の花と彼女の頭との区別がつかない。  藤の花は物心ついたときからずっとそこにあって、小さな青紫の花をたくさんつけ、何かのフルーツみたいにみずみずしくぶら下がっている。彼女のつむじもたわわにぶら下がっている花そのものに見えてよだれが止まらない。藤の花なのか彼女のつむじなのか判断できないのは、何もオレが朝に弱くて寝ぼけているせいではないと断言しておく。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加