必要な対価

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必要な対価

 ある一冊の本があった。    『対価の本』    本とは誰かが作ることで、できたものだ。  本来、それを無料で読み出すことなんて言語道断なわけだが、無料で読んでしまうことが昔は多かった。  『対価の本』は一千年以上前からある。それほど前ならば、巻物で綴られた物と思われてしまいがちだが、違う。  正真正銘、現代の本となんら遜色のない本なのだ。本屋に置いてあっても一冊の本と認識され、無視されてしまうかのような本だ。  しかし、『対価の本』は普通の本とは違う。    『対価の本』を読んだ人は、魔法を使える。正真正銘、嘘偽りのない魔法が使える。しかし対価がある。だからほとんどの人は魔法を覚えようとはしない。          ある男はその日、『対価の本』を手に取った。  当然、その男はそれが『対価の本』だと分かっていた。それでも読んだ、読んでしまった。  “本の内容すべて”を読み終わったあと、彼は家に帰る。  そしてノートを広げて、『対価の本』と同じことを書く。一字一句(たが)わずに、図形も寸分(たが)わず描く。     
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