必要な対価

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 そのあと、ありとあらゆることを想像し、考え、その都度考え抜いて出した答えのような何かをノートにメモしていく。そして、それらから魔法が発動できるか確かめる。魔法は…………使えてしまう。  だから彼は喜んだ。  故に繰り返す。  彼はノートを再び広げて狂ったように想像し、狂ったように考え、狂ったようにノートにメモしていく。  そして実践する。成功する。喜ぶ。  繰り返してしまう。  三度(みたび)ノート広げて、常軌を逸脱するように狂いながら想像し、常軌を逸脱するほどに考え、その考えをノートに乱雑に書きながらも書いている本人はその字をしっかり認識していた。だが既に精神は崩れている。壊れている。  逸脱を、考えの範疇は人間の領域を飛び出して、暴れて暴れ狂っている。それでも魔法を使える。魔法を開発できてしまう。それも、狂えば狂うほど魔法の強さも跳ね上がる。  まさに『魔』の『法』。  魔を学ぶためには常識を捨て、常人ではない発想をもち、すぐさま実行する。何度も何度も何度も。睡眠を忘れ、食欲を忘れ、魔法を生み出すことに没頭し続けて、狂うように勉強する。    そして…………彼は死んだ。    それが餓死なのかなんなのかは不明だが、死んだ。彼は魔法というあまりにも対価が必要過ぎるものを使ってしまった。だから、死んでしまったのだ。    『魔』の『法』を覚えられる本=『対価の本』       
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