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「できたよ。」
顔を洗って着替え終わった時に、タケさんの声が聞こえた。
不器用なカタチの、大きな真っ白なおにぎりと、お椀に入ったお味噌の横にアオサが置いてある。
大きなおにぎりは、なんとなくピカピカ光って見える。
特別ではないけれど、平和で静かな時間が私たちの間に流れている気がする。
おおじいちゃんがくれた時間な気がする。
「いただきます。」
手を合わせて言ってから、お味噌汁にアオサを入れた。
乾燥していた黒っぽいアオサが、お椀の中で鮮やかな緑色になった。
「今日はええ天気やし、散歩でも行こか?」
「そうやね。」
答えて、おにぎりにかぶりついた。
低い箪笥の上にある小さなお仏壇には、仏さん用のおにぎりとお味噌汁のお椀がある。
タケさんは、もういないおおじいちゃんとおおばあちゃんの分のお供えを忘れない。そんな人だ。
私はその光景を見るたびに、変わらずに愛してもらっていることを感じて、幸せな気持ちになる。
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