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そのまま、足をぶらぶらさせていた。
大きすぎるサンダルが、足から逃げ出すように、ヒュンと飛んで、姫と私の間に落ちた。
姫はもうお辞儀をしていない。
私から逃げたサンダルを見つめて、悲しい気持ちを思い出す。
ちょっとだけ、ため息が出てしまった。
「どないしたんや。またお母ちゃんに叱られたんかいな?」
ちょっとザラザラした声は、お友達が聞いたら怖いのかもしれない。この間、学校で見た人形劇の悪魔の声に似ている。
クラスの女子たちは怖いと言ったけれど、私は悪魔が大好きになった。悪魔を退治した王子様が大嫌いになった。
近づいて来た悪魔の声の主は、私の頭にちょんと触れる。
こくりと頷いた私の心の中に、熟した柿を食べた時のようなねっとりとした濃ゆい、濃ゆい甘さが広がっていく。
「なにワルさしたんや?」
「ワルさなんかしてへん!本読んでただけやもん。」
悪魔の質問に、ぷっと膨れて答える。笑ってくれることをわかっているから。
「そうかいな。そんなんワルさちゃうなあ。ほんだらお母ちゃん、なんで怒ったんやろなあ。あかんなあ。」
悪魔の声は、大きなシワシワの手を今度はゆっくりと私の頭に乗せてくれる。シワシワの手からあったかいものが頭のてっぺんから、染み込んでいく。
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