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「いいとこやったから、ちょっと栞挟むとこまで読んでから宿題しょうと思ってたのに。」
「お母ちゃんに先越されて怒られたんかいな。それはかなんなあ、凛はいっこも悪ない、悪ない。」
置かれたままの大きな掌が、そのまま頭をゆっくり撫でてくれる。
「また、えらいとこまで飛んでいったなあ、凛の斤斗雲は。」
ザラザラとした大好きな悪魔の声の主も、最後の夕陽で橙色に染まっている。
おおじいちゃんは、私が飛ばした片方のサンダルを見て、また笑いながら頭を撫でてくれる。
「取ってくるわ。」
私はそう言って大きなサンダルを左足にだけ履いて庭に降りる。ケンケンと片足だけで進んで、転がっている斤斗雲に追いついたとき、
「あっ・・・」
「凛ちゃん!!」
優しい悪魔の大きな声が、私の名前を叫んだ。
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