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あの日、小さな花壇の端で額を切った私を抱えて、病院に走ってくれたのはおおじいちゃんだった。
あとで救急車を呼ばなかったことを、おおばあちゃんに叱られていた。
「大きな病院に行ったら、跡が残らんようにしてくれはったはずや。」
一針だけ縫った傷を見ながら言ったおおばあちゃんが、ちょっと嫌いだった。
おおじいちゃんは、必死で走ってくれたんだ。
おおじいちゃんが私の額を抑えていたタオルは、あっというまに血で赤く染まっていった。
泣きわめく私を抱いて、一生懸命近所の病院に走ってくれた。
途中でおおじいちゃんのサンダルが脱げたのを見た。痛い痛いと泣きわめきながら、脱げたサンダルが視界の中で、だんだん小さくなっていた。
おおじいちゃんは、あのあと毎日お菓子を買ってうちに来てくれた。歩いて5分くらいしかかからないけれど。
でも私は来てほしくなかったんだ。
私が行きたかったから。
痛い思いをして額の傷を作った場所だけど、私はおおじいちゃんの家の縁側と、夕陽に染まる小さな庭とオジギソウが好きだった。
小さな庭はいつだって私の物語の舞台になってくれるから。
働いている両親と、祖母の代わりに、学校から帰った私の面倒を見てくれたのは、おおばあちゃんとおおじいちゃんだ。おばあちゃんのお父さんとお母さん。
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