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出逢い
手を繋いで歩く。
散歩の行き先は、少しだけ離れた公園。
ペットボトルの水を一本買ったタケさんは、つくなり雲梯に向かった。
私はいつものように、ベンチに座って文庫本を開く。
タケさんのジーンズのお尻の本の五倍くらいの厚さ。
温かい日が続いて公園の白梅はもう花が咲きかけている。もう少ししたら、気の早い鶯がケキョケキョ練習を始めるだろう。
雲梯のそばのタコ型滑り台からは、鶯に負けない子供たちの高い声が響いていた。
今日は日曜だから大人の姿も多い。
あの日は平日だった。
だから雲梯で懸垂をしている若い男性は、思いっきり浮いていたなあ。
二年前のあの日を思い出しながら、タケさんの背中を見ていたら、本を読むのも忘れてしまう。
雲梯のサイドで、懸垂を始めたタケさんのお尻には、今日もいつもの文庫本が入っている。
タケさんのジーンズの右後ろポケットは、もうその形に固まっている。
出逢ったあの日は、ジャージを履いてたから本が落ちたんだ。
だから私たちは出逢ったんだ。
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