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オニギリ
窓際に置いたベッドの足元に、カーテンの隙間から薄い陽が射す頃、ゆっくりと目が覚めた。
「おはよう。」
先に起きていたタケさんは、まだパジャマのままで、冷蔵庫から水を出して飲んでいる。
グラスに入れた水を、ベッドの方に持ってきて渡してくれる。
「ありがとう。おはよう。」
「また、おおじいちゃんの夢見たん?」
優しく言いながらベッドの端に座って、そっと額の傷に触れる。
「うん。どうしてわかったの?」
いつもは前髪で隠している傷に、自分でも触れようとした。
タケさんは、その手をそっと取って、
「傷に触ってた。じゃあ、朝ごはんは僕の担当だな。」
そう言ってキッチンに向かった。
私たち夫婦のおかしなルールのひとつ、日曜日の朝、私がおおじいちゃんの夢を見たら、タケさんが朝ごはんを作る。
メニューは決まっている。何にも入っていない塩むすびと、お麩とアオサのお味噌汁。おおじいちゃんが最後に食べたいって言ったのに、食べられなかったもの。
タケさんは自分は、おにぎりと味噌汁と一緒だって言う。
おおじいちゃんの近くにいたのに、間に合わなかったって。
キッチンでお味噌汁を作るタケさんの背中を見ながら、夢の続きを思い出していた。
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