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「えっ…えっ!」  背中に感じる彼のぬくもりに、心臓が大きく高鳴った。 「泊まっていきなよ。どうせ夏休みだし、予定無いんだろう?」 「なっ無いけど、いいよ。帰るから」  何とか彼の腕から逃げようと暴れるけれど、全く通じなかった。 「ああ、オレの部屋、まだ見せてなかったよな? こっち」  強く二の腕を掴まれ、僕は引きずられるように二階に上がった。  二階の奥の部屋が、彼の私室だった。  電気を付けると、黒い家具が眼につく。余計な物は何もなくて、寂しい部屋だと思った。 「ここがオレの部屋。まあ寝るぐらいしか、使ってないけど」  部屋の中に入ると、彼は僕をベッドの上に投げつけた。 「いたっ」  大きく、広いベッドも黒い。  ぎしっと音が鳴った。彼が僕の上に覆い被さった。 「なっ何っ…」  身の危険を感じて逃げようとしたけれど、両肩を掴まれ、ベッドに押し付けられた。  彼の笑みが、獲物を喰らおうとしている野生の表情になっている。眼に鋭さが宿っていた。 「永河ってさ、オレのこと、嫌い?」 「へっ? きっ嫌いじゃないけど…」 「じゃあ、好き?」 「好きって言えば…好き、だけど」  でもそれはあくまでも友達として、だ。  彼の言うのは、何だか違う気がする。     
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