彼と僕

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 口を塞ぐ手を、無理やりはがされた。  僕は震える声で、その人物の名を告げた。 「ふぅん…。随分調子に乗ってるな」  すると彼の眼が鋭く光る。 「いやっ、でも、少しの間だったし…。女子に注意されて、すぐに止めたし…。そっそれにホラ、今日は週末だろう? だからちょっと浮かれていたんじゃ…」 「でも時間はかかった。そのせいでオレは余計に待たされた。―思い知らせてやるか」  何を?とは聞けなかった。  聞かなくても、彼の今後の姿が頭に浮かんだからだ。 「さて、待たされた詫びはどう償ってもらおうかな?」  …そして他人事ではなかった。 「ゆっ夕飯は僕が作るよ」 「それだけ?」 「あっ後片付けもする。おフロ掃除もするから…」 「そこら辺はやってもらっても嬉しくないなぁ。やっぱりオレを喜ばせるには…」  彼はニヤッと笑い、僕の耳元でとんでもないことを言った。 「セックス、だろう?」 「っ! がっ学校ではそういうこと、言わないでよ!」  声を潜めながら怒鳴っても、彼は笑うだけ。 「アハハ。顔、真っ赤」 「~~~っ!」  僕は囁かれた耳を、手のひらでゴシゴシ擦った。  誰かに聞かれたらどうするという僕の心配を、彼は笑い飛ばす。     
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