彼と僕

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「あっ、夕飯は肉じゃがが良いな。あと塩シャケとあさりの味噌汁」 「わっ分かったよ」  でも僕は何一つ、彼に逆らえない。  それどころか反論することさえ、ままならない。  彼こと新真しんま紗神さがみは、そのぐらい強い。  黒い髪に、黒い眼。どこか野性味のある雰囲気だけど、一言で言えばキレイな人。  容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能。  その上、親戚が何人も政治家になっていて、彼のご両親は世界にいくつも店を持つ企業家。  彼自身もまだ高校二年生なのに、会社の仕事を任せられている。  …それにパソコンを使って、いろいろ遊んで稼いでいる。  お金にも人にも何一つ不自由しない人の側にいるのが、何故か僕。  僕の名前は大祇たいし永河えいが。  彼と同じ黒い髪と黒い眼をしていても、顔の作りは平凡で地味。  と言うより、目立たないタイプだ。  生まれてこの方、目立とうと思ったことは一度もなかった。  勉強も運動神経もそこそこで、平凡で地味に生きるのが一番良い事だと、高校二年にして悟っていた。  なのに…彼に眼を付けられてしまった。  彼と出会ったのは高校に入学してすぐ、同じクラスになった。  でも最初はお互い、普通のクラスメートとして接していた。     
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