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天気が良ければ、海が凪いでいれば、最高の結婚式が挙げられると言われていた。
確かに実際来て見て、ここで結婚する人は幸せになれるだろうなと思った。
…そう、他人事ならば良い。
しかし彼が笑顔で神父と会話をしている。英語だけど、時々『結婚』と言う単語が聞こえるたびに、寒気がするのは何故だろう?
初老の優しそうな神父は、にこにこしている。
でも…この教会には僕と紗神、そして神父の三人しかいないようだった。
物凄く、イヤ~な予感がする。今すぐ海に飛び込んで、泳いで逃げ出したいぐらいの悪寒も感じる。
「永河、話ついたよ」
満面の笑顔の彼に声をかけられると、びくっと体が震えた。
「話って…何の?」
「結婚式」
「…一応、聞いておくけどさ」
「うん」
「誰か身近な人が、結婚するの?」
「うん。オレと永河」
やっぱりっ!
「遠慮させていただきますっ!」
海に向かって走り出すも、彼の方が足が速かった。すぐに捕らえられて、ズルズルと教会の中に引きずり込まれた。
神父が笑顔で手を振って、見送ってくれる。どうやら外で待っているらしい…。
「そう照れるなって。日本じゃ恥ずかしいだろうから、せっかく外国にしたのに」
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