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「何だ。オレはあれから素直になっているし、てっきり両想いだって通じているのかと思ってた」
…わぁ。分かっていたことだけど、この人、信じられないぐらい自意識過剰だぁ。
「それじゃあ改めて言うよ」
彼の手には、いつのまにか金の指輪があった。それを素早く僕の左手の薬指にはめた。
「なっ、ちょっと!」
「愛しているよ、永河」
信じられないぐらい甘い言葉を囁くと、キスしてきた。触れるだけの、軽いキス。だけど…今までで一番優しいキスだった。
「永河は? オレのこと愛しているよな?」
僕は自分の顔が赤くなるのを感じた。
答えなんて、一つしかない。
「…うん。愛してるよ、紗神」
僕はぎゅっと紗神に抱きついた。
「んっ。知ってた」
どこまでも自信家の人。でもこの人がこうでなきゃ、僕はこんなに強く惹かれなかっただろう。
「あっ、僕も指輪買った方が良いよね?」
「いや、オレはもう自分のあるから」
そう言う彼の左手の薬指には、すでに金の指輪があった。
「でも…」
「良いんだって。そもそも指輪を買う為にバイトをはじめて、オレの側にいる時間が短くなったらイヤだしな」
…どこまで先読みする人なんだろう?
僕が数秒前まで考えていたことは、全部お見通しってわけか。
「なあ、永河。お前、自分のことを自信なさそうに言うのやめろ」
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