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「うっ」
それを言われると、アレだけど…。
「永河はオレが選んだヤツなんだから」
「ずっと不思議に思ってたんだけど…いつから僕のことを?」
「ん? そうだなぁ…。まずは入学式で一目見てから、何か気になってたんだよな。そしたら体力測定やテストで、見た目よりスゴイ成績出しただろう? それで一気に興味を持ったんだ」
見た目よりって、かなりいらない言葉だと思うけど…。
確かにクラスで上位に入るぐらいの成績は残した。…けれど彼はその上をはるかにいったものだから、自分の成績なんてあまり頭に残っていなかった。
「正直なことを言うと、マンションに招待した時点では抱こうと思っていなかった。でも話をしているうちに、もっと気に入った。だから抱きたくなったんだ」
「それって…いわゆる一目惚れってこと?」
「まあそうだな。生まれて始めてのことで、自覚するまで時間がかかったけど。永河、お前だってそうだろう?」
自信ありげに微笑む彼に、反論ができない。
「まあ、ね」
入学式が行われた講堂で、新入生代表として挨拶をする彼を見て、一目で心を奪われた。
けれどそれは僕に限らなかっただろうし、まさか紗神も僕と同じ気持ちになっていることなんて、今まで知らなかった。
「だから信じろよ。オレの愛と、お前のことを」
「うん…、信じるよ」
僕は彼の眼を真っ直ぐに見て、誓った。
「ああ、それで良い」
紗神は満足そうに微笑み、二度目のキスをした。
誓いのキスを。
「…あっ、そうだ。急だったから指輪にしたんだが」
「うん?」
結婚式と言えば、指輪だろう。
しかし彼は次の瞬間、輝く笑顔で言った。
「首輪の方が良かったな」
「…はい?」
「オレのデザインで、特注で作らせるか。世界に一つしかない、豪華で立派なヤツ」
…やっぱり彼は、どこまでいっても彼だった。
そして僕も…。
「うん…そうだね」
どこまでいっても僕だった。
【END】
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