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…その考えは全く逆だとは、一年経った今でも言えない。
何がキッカケで、彼が僕を抱きたいと思ったかなんて分からない。
彼に誘われたのは夏休みだった。
その頃はテストや体力測定など、いろいろなことが終わってほっとしていた時だった。
だから油断していた。気が抜けていた。
終業式が終わって帰る前に、呼び止められた。
「明日、オレんちに遊びに来ない?」
「新真くんの家に? 確か一人暮らしだったっけ」
「そう、マンション暮らし。一人じゃ寂しくってさ。ご飯とかも味気なくて。良かったら来ない?」
僕も一人暮らしがちょっと寂しかった。
それに彼に声をかけられて、嬉しかった。舞い上がっていた。
彼の周りには男女問わず、常にたくさんの人がいた。
それにカリスマ性が強く、先生達ですら彼の言うことには逆らえなかった。
学校の支配者になっていたと言っても過言じゃない。
彼は強く、美しい。
従うことを喜びとしてしまう人が多くてもしょうがない。
そんな彼に遊びに誘われたということが、嬉しかったんだ。
次の日、駅で待ち合わせをして、彼のマンションへ行った。
けれどその大きさと広さと豪華さに、眼が丸くなった。
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