お持ち帰りは吸血鬼で宜しいですか?

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 数分後。外出していた父が帰宅する。 「やぁ。 ただいま、真由、理人」  朗らかに笑う彼の名前は、宝条(ほうじょう) 真琴(まこと)。どう見ても二十代前半にしか見えないが、今年で三十七歳になる私の父親だ。  ちなみに、昼間は東京にある大学で民俗学を教えている。 (パパも帰ってきちゃったし、これはいよいよ今から家族会議かな……)  父の顔を見るなり身構え、気を引き締める私。  すると私の顔を見るや、母が父に駆け寄り、何かを小さく耳打ちする。  それを聞いた瞬間、見るからにぱぁっと瞳を輝かせ、自室へと駆け込んでいく父。  暫くバタバタと何かを探し回る様な音を響かせていたかと思うと、直ぐに両手にありったけの本や記録媒体を抱えて戻ってくる。  抱えられている本は『吸血鬼伝説』や『恐怖のヴァンパイア』等、どれも吸血鬼についての書籍ばかりだ。  父はその内の一冊――『幻の生き物辞典~吸血鬼やグリフォンの生態について~』と書かれた本を取り出すと、私達を見回し、得意気に笑ってみせる。
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