吸血鬼さんIN学校

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 優しい焦げ茶色の髪が冬の風に揺れ、紫の瞳が私を見付けて頬笑んだ。 「探したぞ、マユ」 「うそっ!? リルゼイ!?」  昨晩から『一目惚れした』発言で私を悩ませている、渦中の吸血鬼だった。  彼は私の姿を見付けると、まるで子犬の様に嬉しそうに走り寄ってくる。 「え!? ちょ、どうして学校にリルゼイがいるの!?」  有り得ない場所に有り得ない人物がいる驚きに、私は半ばパニックになる。  と、彼が下げていた鞄から徐に何かを取り出した。  私は少しだけ首を伸ばす様にして、彼の手元を覗き込む。その瞬間、私の驚きは別の意味での確信へと変化した。 「私の飲み物とお弁当……! まさか、わざわざ持ってきてくれたの?」 「ああ。母君から、とても大切な物だと聞いてな」  彼が鞄から取り出したのは、朝私が家に忘れた筈の弁当と飲み物だったのだ。  私はそれらとリルゼイの顔を交互に見つめながら、つい、慌ただしく問い掛ける。 「え、でも、どうして…って言うか、どうやって、此処に? 私、学校なんて教えてなかったよね?」  すると、彼は私を抱きしめ、耳元でそっと囁いた。
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