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「あ、あの雲美味しそう。」
私は思わず呟く。青く澄み渡った空を見上げると、ひとつだけふわふわ浮かぶ白い雲が流れていた。
「おっす。朝から何を呟いてるんだ?」
「わっ、先輩!おはようございます。」
朝の通学の途中、私より1つ年上で高2の友永 陸先輩が後ろから私の頭をポンっと叩いてきた。
「空に何かあるのか?」
先輩は手で日差しを隠しながら私の横に並んで一緒に空を見上げる。
「あの白い雲、綿飴みたいで美味しそうじゃないですか?」
「あはは、美希お腹空いてるんじゃね。」
先輩は私、大野 美希の名前を呼びニッコリと笑う。そして制服のポケットから何かを取り出し、私の手にそれを渡してきた。
「俺の非常食、分けてやるよ。じゃあな。」
先輩は足早に前を歩いている友達のところへ行く。私は手のひらを広げて、先輩から貰ったものを確認する。
「飴ちゃんだ。」
手のひらにはレモン味の飴があった。私は前を歩く先輩を見つめ、ギュッと飴を握りしめる。そして頬を赤く染めニコッと笑った。
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