空へ

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ーー 放課後 授業も終わり、これからは部活の時間だ。私は陸上部に所属していて主に高飛びをメインに頑張っている。大好きな高飛び・・のはずが、最近は部活に行くのも億劫(おっくう)だ。 なぜなら・・・。 私は更衣室で長い髪をポニーテール結びにして、体操服に着替えて陸上部の練習が行われているグラウンドへ向かう。準備運動を終わらせ、設置されたバーのところへ行き高飛びの練習を始めた。 ポスッ 何度か背面跳びで飛んでみるが、全部バーに当たってしまう。 「やっぱり駄目だぁ。」 私はマットの上に倒れ込んだまま腕で目を隠し呟いた。そう、私が部活に億劫(おっくう)な理由・・・只今スランプ真っ最中なのだ。 「おーい、大丈夫か?」 マットに倒れこんだまま起き上がらない私の元へ、ジャージ姿の陸先輩が心配そうにやってきた。 陸先輩は陸上部のマネージャーをやっている。元々は私と同じ高飛びの選手だったが、足を怪我してからは選手を断念してマネージャーとしてみんなをサポートしてくれてる。 「ごめんなさい。大丈夫です。」 私は慌てて起き上がりマットから降りようとする。すると、陸先輩が笑顔で手を差し伸べてくれた。 ドキドキしながら差し出された陸先輩の手の上に私の手を乗せる。 あっ ーー 陸先輩は力強く私の手をグィッと引っ張り、その反動で私は思わず先輩の胸に飛び込んでしまった。しかし、陸先輩はそのまま私を抱きしめて耳元で(ささや)いた。 「大丈夫だよ。美希は飛べる。」 それだけ言うとパッと私から手を離し、その場から離れていった。私は全身の力が抜け、その拍子にマットの上に尻もちをついて座り込んだ。 「せ、先輩~!?」 どうやら陸先輩は私のスランプに気づいているようだ。飛べない私を励ましてくれたのだろう。でも赤面した私の顔はなかなか元に戻らず、顔を隠しながら今はただ私の近くに誰も来ないでと願うばかりだ。
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