その人は

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*** 高校を卒業してみんな就職や進学で東京やら大阪京都に散っていく中。 家を離れて遠くにいくのをいやがったわたしは、どうにか隣町の工場で就職が決まり、家から自転車で通勤していた。 東京で一人暮らしとか、あり得ないし。 恐怖でしかない。 そうして工場からの帰り道にある小さな川のある土手で、腰を下ろして買ったばかりの漫画雑誌を読み耽るのが楽しみだった。 「あ~幸せだ」 と、秋の風に吹かれながら空気を吸い込む。 朝夕は犬の散歩道でもある。 そのワンコを眺めるのも好きだ。 ワンッ!と頭の上で鳴き声がしたと思ったとき。脇に何かがずざざざっ!!と滑り落ちてきた。 「うおぉおっ!?」 「なななっ?!なに?!」 思わず飛び退き、びくびくしながらゆっくりと、本を盾に恐る恐る目を細めて見る。 人だ。
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