君という人。

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僕はずっと君が好きだった。恋愛感情とかではなく、友達として君が好きだった。 君といる時間はとても心地よくて隣で座って話しているとつい寄りかかって眠ってしまう時もあったほどだ。子供みたいに頭を撫でられると余計に眠くなってしまうからあまり撫でないで欲しいな。もう少し君と話したかったんだ。 休みの日、数え切れないほどたくさん旅行をしたよね、すごく楽しかった。一緒にお風呂に入ろうって言ったら君は少し恥ずかしそうにしていたけど、男同士なんだから何も恥ずかしがることはなかったのに。体を洗いあって一緒に浸かった湯船はとても気持ちよかった。 そういえば、君はよく寒いと言って僕の布団に入り込んでくるけど、本当に寒がりなのかな?僕が抱きしめると体はいつも火照っているようだったけど。僕が寝ている間に何かゴソゴソしてたのも知ってるよ。僕とじゃなくて可愛い彼女でも作って旅行すればよかったのに。まぁ、僕は君とずっと話が出来て嬉しかったけど。 もう少し、君と話がしたかった。君が語る空想の話を聞きたかった。どうして最後に、最後の最後に、愛してるなんて言ったんだ。僕を守っていなくなってしまったんだ。あの時の掠れたような声が、今でも頭から離れない。君はずっと僕が好きだったのかな。友達としてじゃなく、それは恋愛感情だったのかな。僕はそれをずっと勘違いしていたのかな。もしかしたら、僕もずっと君に恋をしていたのかな。心が痛くて、悲しくて、君がいなくなったことが信じられなくて何度も君に電話をかけたんだけど、やっぱり繋がらなかった。もう一度君の声を聞きたい。話を聞きたい。笑顔を見たい。どうしたらもう一度君に会える…? その日のニュースでは、ある交通事故が報道されていた。居眠り運転していたトラックが反対車線を走行していた車にぶつかったというものだった。追突された車はトラックを避けるようにハンドルを切って急ブレーキをかけたものの回避出来ず、そのまま運転手席側だけぺちゃんこに潰され、懸命な救助も虚しくそのまま亡くなった。同乗していた男の名前は報道されなかったが、亡くなった人の名前は年齢とともにしっかりと報道されていた。(きみ) 正彦(まさひこ)、と。
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