第九九話 風雲信濃戦線

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 そこで信長ちゃんは、信玄が攻めてくるならば援軍の用意がある、と村上義清と小笠原長時と誼を通じることにした。  武田晴信(信玄)は七年前の天文十年(一五四一年)に重臣の助力を得て、父親の信虎を駿河の今川家へ追放して家督を相続した。  その後信玄は、征服戦争により諏訪と佐久の領国化に成功して『強い領主』として自身の政治的立場を固めてきた。  ところが今年二月の上田平の大敗により、家督相続からそれほど年月を経ているわけでないので、磐石ともいえない信玄の政治的立場は必ずや揺らいでいるはず。  信玄は合戦で勝利して強い領主が健在なことを、喧伝(けんでん)しなくてはならない。おそらく来年の田植えが終わった後から稲刈り前に、信玄の信濃出兵が行なわれるだろう。  織田家としては、これ以上武田を太らせるわけにはいかない。  史実でおれ滝川一益が活躍した、因縁の対武田戦が始まろうとしている。
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