第三話 信長様は姫だった

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 会ったのが考えに柔軟性のある信長でなかったら、こう上手くは進まないだろう。 「はっ! 喜んで」 「名を与える。ヌシはこれから左近と名乗るのじゃ」  どこから、左近が湧いてくるの? 「へ? 何ゆえ左近と?」思わず訊ねる。 「それはな……左近に右近やら、四天王やらが家来にいれば、強そうで聞こえが良いのじゃ」  厨二病かよっ!  年齢が年齢だし、ドヤ顔をしている信長に楯突くのは愚かだな。  短気で苛烈なエピソードも残っているし。 「ありがたき幸せにございます!」 「爺も心配しているので城に戻るのじゃ。ふむ……左近はそうだな、是非もなし。ワシの後ろに乗るのじゃ」  馬に乗った経験はないけれど、どうやら身体が覚えているらしい。自分でも驚くほど簡単に騎乗できた。  いいのか? 仮にも嫡男(ちゃくなん)なんだし、普通は何人もお供が付くよな。  思っていたら大声が聞こえてくる。 「(きつ)さまぁあ、探しましたぞぉお!」  これまた騎馬少年が駆け寄ってくる。信長の近習(きんじゅう)だろうか? 「おう、カツか! 許せ」 「この池田勝三郎(かつさぶろう)、平手様に叱られてしまいます。して、そちらの御仁(ごじん)は?」     
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