第二話 時空を超えた出会い

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第二話 時空を超えた出会い

 迫りくる馬を、寸前で道端に転がってなんとか避けられた。 「あ、痛たた……」  ふう。ぎりぎり。  上体を起こした目に映ったのは、いちど通り過ぎたものの、パッカパッカと、こちらに馬を返してくる少年。  彼もおれと同じく着物姿で、赤い鞘の刀を差している。  またしても戦国時代の夢なのだろうか。本能寺の変といい、一体なんなんだよ。 「(あい)()まぬの。大事(だいじ)ないか? しかし、ヌシが飛び出してくるのも悪いのじゃ」  少年が騎乗のまま声を掛けてくる。よく通る甲高い声だ。  状況がつかめず混乱しているせいか頭が痛む。少年に答えた。 「少し頭が痛むんだ」 「なんと、頭が痛む! 由々(ゆゆ)しき事態かもしれぬ。しばし、待っておるのじゃ」  少年は身軽なこなしで馬から下りて、手綱(たづな)を道端の木に括り付けて馬を固定する。そして、飛ぶように道の脇を流れる小川に駆け下りていった。  そうか。水を汲みに行ってくれてるんだな。  馬に蹴られたから頭が痛むのではなく、身の回りで起こる出来事が理解できずに頭が混乱しているんだ。ともあれ水はありがたい。  少年の気遣いに感謝する。     
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