185人が本棚に入れています
本棚に追加
/700ページ
第二話 時空を超えた出会い
迫りくる馬を、寸前で道端に転がってなんとか避けられた。
「あ、痛たた……」
ふう。ぎりぎり。
上体を起こした目に映ったのは、いちど通り過ぎたものの、パッカパッカと、こちらに馬を返してくる少年。
彼もおれと同じく着物姿で、赤い鞘の刀を差している。
またしても戦国時代の夢なのだろうか。本能寺の変といい、一体なんなんだよ。
「相済まぬの。大事ないか? しかし、ヌシが飛び出してくるのも悪いのじゃ」
少年が騎乗のまま声を掛けてくる。よく通る甲高い声だ。
状況がつかめず混乱しているせいか頭が痛む。少年に答えた。
「少し頭が痛むんだ」
「なんと、頭が痛む! 由々しき事態かもしれぬ。しばし、待っておるのじゃ」
少年は身軽なこなしで馬から下りて、手綱を道端の木に括り付けて馬を固定する。そして、飛ぶように道の脇を流れる小川に駆け下りていった。
そうか。水を汲みに行ってくれてるんだな。
馬に蹴られたから頭が痛むのではなく、身の回りで起こる出来事が理解できずに頭が混乱しているんだ。ともあれ水はありがたい。
少年の気遣いに感謝する。
最初のコメントを投稿しよう!